電話: 080-5699-1961

mail: hayashi.kjin@gmail.com

W-1 2050年1月1日 第一話

SF小説『パラレルワールド』
第1章 W-1 2050年1月1日 第1話

「あけまして、おめでとう。今年もお願いいたします」

敏郎は昼近い11時に目を覚ましてダイニングに降りると、正月のおせち料理を並べている麻子に今年はじめの第一声をかけた。
麻子は、お気に入りの麻模様の着物を着て、お膳の用意をしながら、敏郎の方を向くと、きちんと正座をして頭を下げた。

「本年も、どうぞよろしくお願いいたします。」

敏郎は近くの神社の役員をはじめて、かれこれ50年がたつ。

毎年大晦日は近くの神社の初詣のため、深夜から朝方3時まで立ちっぱなしで、だいたい毎年、正月1日の起き出す時間は昼頃となる。

お正月に着物を着るのは、毎年の決まりとなっている。
そのほかには、お茶室でお茶を点てるときと、能を鑑賞するときくらいだが、はやり着物はいい。
お気に入りの大島紬を着て、和室にすわる。

麻子は麻子で、普段からできるだけ着物をきて生活している。
それがしたいために、結婚してから15年目の年に、わざわざ数寄屋造りの日本家屋を新築したくらいなのだ。
ただ、正月とあって、普段は着ない、桃色の着物に緑の帯をしめている。
着物の後ろ姿はいつみても美しく、前日初詣の神社のお勤めで寝不足もあいまって、敏郎はつい目を細めてしばらくぼーっとしていた。

「さあ、初湯をいただきましょう」

敏郎の家では、新年最初に口にするのは、湯呑みに梅干しと砂糖を入れた湯と決まっている。
そうこうしているうちに、息子の光太郎が起きてきた。

「あけまして、おめでとう、ございます」

光太郎はそういうと、正座をし、初湯をねだった。

麻子と敏郎はこの年80歳。光太郎は8歳、二人にとっては11人目となる子であった。

(参考図書 苫米地英人著『2050年衝撃の未来予想』(TAC))