電話: 080-5699-1961
mail: hayashi.kjin@gmail.com
連載SF小説『パラレルワールド』
第1章 W-1 2050年1月1日 第3話
(この投稿は、フィクションです)
「おお、光太郎元気だな。日本に降りたのは半年ぶりだな。」
寛康は、光太郎に声をかけたあと、麻子から湯呑みを受け取ると、お茶のお手前のごとく上手に初湯を飲み干した。
光太郎は、寛康が初湯を飲み干すのをまって、さっそく話はじめた。
「ひろちゃん、東京の新しいおうちにあそびにいっていい?それから、サッカーしようよ」
「光太郎、ちょっとまってなさい、大人の話がすんでから」
麻子が光太郎に声をかけるが、光太郎はいっこうに話すのをやめない。
「ひろちゃんのうち、いついけるの?ねえ、ねえ」
「正月の東京は、年に一度のシステムメンテナンスの時期で、来てもおもしろくないよ。正月があけて、再来週だったらいいよ」
寛康はそういうと、父敏郎に向かって
「とうさんも、その時来るといい。あたらしいコスモポリスがオープンするからね。」
「おお、それは楽しみだ。しかし、東京に行くのは久しぶりだな。今から申請しとかないとな」
そういうと、敏郎は端末をとりだして、入国申請のアプリを起動した。
「1月11日でいいかな、この日だとすぐに上がれるぞ」
寛康がうなづくの見計らって、申請ボタンを押す。
端末には、すぐに
「日本20年1月11日出国許可(日本国)・入国許可(東京国)」
と表示された。
2050年の、日本国の年号は、日本となっていた。
さかのぼること20年前の2030年、つまり日本元年、それは、日本が大きく転生した年であった。
2030年、Japanは、消滅した。
それは、戦争で負けたとか、財政的に破綻したとか、そういった生やさしいものではなかった。
2027年に起きた富士山の噴火、そして、翌年おきた関東・南海トラフ連動大地震により
東京はもちろん、名古屋、大阪といった都市部は壊滅的な打撃を受けた。
そこに、感染症が襲いかかった。
生き残った人々は、
都市部から郊外へ
日本から海外へ
と移っていった。
それまでの震災や戦災に比べ、被害が大きすぎた。
それだけではない。
その3都市を復興させるだけの余力が、日本はおろか、世界中の国に、なかった。
どこの国も、「自国ファースト」となり、
人材流出が進みぼろぼろすかすかになった日本に、金融資本家は、関心も興味も抱けなかったのだ。
主要3都市に関しては、震災から2年たって、建設復興の放棄が決まった。
そして、日本国Japanは消滅。
復興を放棄した、東京エリア、名古屋エリア、大阪エリアはそれぞれ放棄国家として独立させ、
残りの国土を元に全く新しい国として日本国Nipponがスタートしたのだ。
それが、2030年、日本元年のできごとであった。
(参考図書 苫米地英人著『100年後の日本人』(角川春樹事務所))
2025年10月17日 15時49分